メニュー

もの忘れ外来(認知症外来)

<もの忘れ外来> 

※日本認知症学会専門医・指導医、認知症サポート医が診察させていただきます。

 

【はじめに】

 現在、本邦では600万人以上の方(65歳以上の約6人に1人)が認知症を患っているとされており、その数は年々増加しています。また、日常生活に何らかの介助が必要となる方(要介護者)の原因疾患としては認知症が最も多く、次いで同じく頭の病気である脳血管障害(脳卒中)となっています。

 認知症は、高齢者の方だけでなく、若年層にも社会的影響を及ぼす可能性がある重要な健康問題です。当院では認知症の診断や生活でのお困りごとをご一緒に解決していくお手伝いはもちろんのこと、早期発見と予防についてのアドバイスにも力を入れております。介護保険の主治医意見書運転免許についてのご相談も承っております。

 

 以下では、認知症の症状や種類、特徴、診断、治療と介護などについて説明いたします。

 

【認知症の全般的な症状】

 認知症は、もの忘れから始まることが多く、その後様々な認知機能の低下により日常生活を送ることが困難となる疾患です。主な症状は記憶力の低下、判断力の低下、言葉理解の困難、行動の変化などであり、その後の経過とともに運動機能の低下、移動能力の低下、栄養状態の悪化などから最終的に寝たきり状態となる可能性が高いです。

 

【認知症の種類】

 認知症の原因疾患は様々ありますが、以下の4つの病態が代表的です。

 

1. アルツハイマー型認知症

 最も代表的な認知症で、認知症の中で約60%を占めています。多くが65歳以上のお年寄りに発症しますが、若い人にも発症することがあります。この病気の原因は、脳内にアミロイドと呼ばれるタンパク質が沈着することです。最初は物忘れから始まり、その後、認識能力の低下、判断力の低下、精神症状などが徐々に進行していきます。症状を完全に治すことはできませんが、病気の進行を遅らせる薬が使用することができます。

 

2. レビー小体型認知症

 認知症の中で3番目に多い原因で、脳にレビー小体と呼ばれる物質が出現する病気です。この病気は認知症の症状だけでなく、パーキンソン病のような体の症状も現れることが特徴です。具体的には、手足の震え歩行障害などから動きが緩慢となります。また、現実には存在しないものが実際にそこにあるかのように見える幻視も起こることがあります。その他、立ちくらみ、失神、抑うつのような多様な症状が出現します。

 

3. 前頭側頭型認知症

 脳の前方部分、特に前頭葉や側頭葉が変性して萎縮することによって引き起こされる認知症の一種です。このタイプの認知症は、主に65歳以下の若い年齢層で発生し、アルツハイマー型認知症よりも頻度は低いとされています。症状は人格の変化意欲の低下などを引き起こす前頭葉症状と、言語障害などが発生する側頭葉症状があります。初期段階では、アルツハイマー型認知症とは異なり記憶障害が顕著ではありません。また、奇妙な行動を繰り返すことがあり、性格が変わってしまったり、物事に無頓着でだらしなくなることで気づくことがあります。

 

4. 血管性認知症

 脳梗塞脳出血など、脳血管障害に起因して脳の神経細胞が損傷されることによって発生する認知症になります。このタイプの認知症は、全体の認知症疾患の中で2番目に多く見られます。脳血管障害は急に発症するため認知症の症状も急に現れ、この点が前3疾患のような神経変性疾患とは大きく異なります。また、認知症の症状だけでなく、運動障害、しびれ、言語の問題など神経に関する症状も一緒に現れることがあります。血管性認知症では認知症の治療だけでなく、脳血管障害の治療も必要となり、特に生活習慣病の管理が非常に重要となってきます。

 

【上記以外の認知症】

 これらの疾患は内科的治療や手術治療により治る可能性のある認知症になります。

 

内分泌・代謝性疾患

甲状腺機能低下症、ビタミンB欠乏症、肝性脳症、低血糖症、アルコール性脳症

感染性疾患

髄膜炎、脳炎

脳疾患

脳腫瘍、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、頭部外傷後遺症

薬剤による認知機能障害

認知機能障害を起こす可能性のある薬剤は多岐にわたります。
まずは、多くのお薬を内服されている方、新しいお薬が開始となった後から明らかに様子が変わった方、などは注意が必要です。

 

【認知症の診断】

 まず、認知機能低下の原因には様々な要因が関係します。患者さんの診察だけでなく、ご家族の方からも詳細なお話を聞かせていただく必要があるため、その診断には時間を要します。すなわち、簡便な認知機能検査や画像検査を行うだけで判断することはできません。

そのため、診断には認知症に対する専門的な診察はもちろんのこと、全身の状態を診させていただく必要があります。

 

 以下に、認知症の診断手順について概略します。

 

1. 症状評価

 最初に、患者さんやそのご家族の方との面談を実施します。患者さんの症状や病歴について確認させていただき、日常生活でのお困りごとや最近の変化についてお聞きします。この情報が診断にとって重要な要素となります。

 

2. 身体検査

 次に、認知機能以外の身体症状がないかどうか診察させていただきます。いくつかの認知症に特徴的な症状がないかどうかを確認することは診断に欠かせません。また、認知症以外の疾患により認知機能障害を引き起こすことがあるため、これらの疾患を除外する必要があります。

 

3. 認知機能検査

 患者さんの認知機能を評価するため、さまざまな認知機能検査が行われます。一般的なテストにはミニメンタルステート評価(MMSE)やモントリオール認知検査(MoCA)などがあります。これらのテストは記憶、言語、判断力、空間認識などを評価します。また、立方体模写テスト時計描画テスト注意力の検査など患者さんに合わせていくつかの検査を実施します。

※軽度認知障害よりも前段階での認知機能の評価も行っております。※(注)保険診療外の検査になります。

https://nouknow.jp

4. 精神状態評価

 うつ状態や不安障害などの精神疾患を除外するための評価も行います。精神状態の変化は認知症の症状と混同されることがあるため、適切な治療を提供するために必要となります。

 

5. 臨床検査

 脳の画像検査(CTMRIなど)や血液検査などの臨床検査を行います。画像検査のみで認知症を診断することはできませんが、特徴的な画像所見が認知症の診断には有益です。また、画像検査や血液検査により、治療可能な認知症を発見することができます。※【上記以外の認知症】の疾患の除外

 

6. 進行度の判断

 認知症と診断された場合にその進行度合いを評価します。

 

7. 最終診断

 最終的な診断は、患者さんの病歴、身体検査、認知機能検査、臨床検査、進行度を総合的に判断し、それに基づいて治療計画を立てます。介護保険の手続きが必要な方は、ご案内をさせていただきます。

 

 認知症の正確な診断を下すためには時間と専門知識が必要ですが、患者さんとご家族の方のご協力があってこそ成り立ちます。診断後に適切な治療および支援を考え、患者さんの生活の質を改善するために一緒に取り組ませていただきます。

 

【治療】

1. 生活習慣の改善

 生活習慣の改善は、認知症の進行を遅らせるために極めて重要です。以下は、健康な生活習慣の指導に関連するアドバイスになります。

 

  • バランスの取れた食事:栄養バランスの取れた食事を摂ることが大切です。特に抗酸化物質やオメガ-3脂肪酸を含む食品は脳の健康に良い影響を与えます。お食事以外にも効果が期待されるサプリメントなどもございます。

 

  • 運動:運動は脳の機能を改善し、認知機能の低下を遅らせるのに役立ちます。有酸素運動(ウォーキング、自転車、プールなど)だけでなく、無酸素運動(筋トレ、負荷運動など)も認知症予防に効果があります。まずは日常生活に運動を取り入れ、無理なく習慣化できるような工夫をしましょう。例えば、毎朝歩く、寝る前にはストレッチを行う、何曜日は運動教室に行く、デイサービスを利用するなど、ご自分にあった形で運動することに慣れていくと良いです。

 

  • 社会的活動:社会的な交流や趣味活動は脳の活性化に寄与し、認知機能を維持するのに役立ちます。

 

  • 睡眠のコントロール:日常生活リズムをつける、日常生活に運動を取り入れる、ストレスを減らす、排尿コントロールをつける、など基本的なことを確認します。必要であれば、睡眠薬の使用を検討しますが、睡眠薬の中には依存性があったり、認知機能を低下させることが報告されている薬剤もあります。認知機能が低下してきた方には、その方に合わせた適切な睡眠コントロールが必要となります。

 

2. 生活習慣病の管理

 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を患っておられる方はこれらのコントロールが極めて重要になります。

 何歳の方か、認知症の進行度はどれぐらいなのか、など様々な要因により生活習慣病のコントロールの度合いは変わってきます。認知症の専門家としての視点から治療を行う必要があります。

 

3. 薬物治療

 薬物治療は、認知症の進行を遅らせ、症状を軽減することを目的とします。

 

  • コリンエステラーゼ阻害薬:認知症の一部では、アセチルコリンという神経伝達物質の不足が見られます。コリンエステラーゼ阻害薬は、この物質の分解を抑制し、認知機能を改善します。飲み薬と貼り薬があります。

 

  • NMDA受容体拮抗薬:一部の認知症治療には、NMDA受容体拮抗薬が使用されます。これらの薬物は、神経細胞の保護や情報伝達の改善に寄与します。

 

  • 認知症の周辺症状(BPSD)を認める患者さんに対して、いくつかの薬物治療が行われます。

 

4. 薬物治療以外の治療方法

  • 行動療法:認知症患者の行動療法は、特定の症状に対処するために使用されます。不安、抑うつ、興奮症状、暴力的な行動などを管理するのに役立ちます。

 

  • リハビリテーション:認知症患者に対するリハビリテーションプログラムは、認知機能を維持し向上させるのに役立ちます。言語療法、物理療法、職業療法などが含まれます。

 

5. 介護保険を利用したケア

 介護保険を利用して必要なサービスを受けることができます。介護保険は、在宅介護や施設入所などのサービスの費用を一部補助する制度です。介護保険を活用することで、専門的な介護スタッフのサポートを受けながら、患者の生活の質を向上させることができます。介護保険の主治医意見書の作成も行っておりますので、お気軽にご相談下さい。

 

【治療のまとめ】

 認知症の予防や治療で大切なことは、規則正しい生活とバランスの良いお食事、様々な社会的活動に参加すること、運動、睡眠といった日常生活の中にあります。こう聞くと「当たり前のことで治療ではないのではないか?」と思われるかもしれませんが、最も大切なことは、社会的活動へ参加し様々な運動を日常生活に取り入れることです。

 

 薬物治療は特定の認知症には効果が期待できますが、薬物治療も全体の中のあくまで一部分に過ぎません。様々な治療や対策を組み合わせていくことが、認知症治療では大切になります。患者さんやご家族が生活されている状況は皆さま異なりますので、治療を進めていく方向もそれぞれの患者さんによって異なります。

 

 認知症の治療とケアは個別の症状や疾患の進行に合わせて変わってきます。特に認知症という疾患だけにフォーカスして患者さんの治療を行うのではなく、かかりつけ医として全身の状態を調整することが、認知症の治療と予防には欠かせません。当クリニックでは、患者様とそのご家族のニーズに合った治療と総合的にサポートさせていただくことを心がけています。ご不明点などございましたらお気軽にご相談ください。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME