頭痛外来
▷日本頭痛学会専門医・指導医が診察させていただきます。
【はじめに】
脳神経外科医として頭痛診療を行っていますと、命の危険があるような頭痛から日常的によくある頭痛まで様々な方を診察させていただきます。命の危険があるような頭痛の多くは突然発症で、明らかにおかしいと気づき病院を受診される方が多いですが、慢性的な頭痛に関しては病気とは考えずに鎮痛薬で何年も様子を見る方も多くいらっしゃいます。しかし、慢性的な頭痛についても放っておくと取り返しの付かない事態に陥る場合もあり、早期発見が予後を大きく左右することもあります。
実際の臨床では、「頭痛ぐらい我慢しなさい」と言われたことがある、というお話をお聞きすることもまだまだ多いです。頭痛が月に数回で、鎮痛薬を使用すればすぐに改善してしまう “いつもの頭痛” であれば生活に支障をきたすことは少ないかもしれませんが、対応を間違えれば慢性化することもあります。すでに慢性化して生活に支障をきたしていても、我慢されている方も多く見受けられます。
以下は一般的なお話になります。
頭痛の疫学統計
- 日本頭痛学会の調査によると、日本人の約40%以上が頭痛に悩まされているとされています。
- 特に、片頭痛と緊張型頭痛(肩こり頭痛)が最も一般的な頭痛で、日本国内の成人男女において、片頭痛の有病率は約8%、緊張型頭痛の有病率は約54%と報告されています。
- 生活に支障をきたす頭痛は片頭痛であることが多いです。
頭痛による経済損失
- 頭痛によって生産性が低下したり、医療費によって経済的な損失をがもたらされる可能性があります。
- ある研究によれば、日本における片頭痛に関連する経済損失は年間約2兆円に達すると推定されており、仕事の休業や低い生産性、医療機関での受診などが経済損失の要因とされています。
若年層への影響
- 頭痛は全年齢層で問題となりますが、特に若い世代に影響が大きいことが知られています。
- 若年層の学業やお仕事において、頭痛が生活の質を低下させ活動の制限をもたらすことがあります。
女性への影響
- 片頭痛は女性に多く見られる傾向があります。
- 特に月経周期と関連する月経固有の片頭痛が女性に影響を及ぼすことが多いです。
健康への影響
- 頭痛は単なる痛みだけでなく、吐き気、嘔吐、過敏症などの症状を伴うことがあり、日常生活に大きな影響を与えます。
- 頭痛が慢性化すると、うつ病や不眠症などの原因となることもあり、逆にメンタル不調の一つの症状として頭痛が出現することもあります。
これらの情報は、頭痛がどれほど広範な社会的影響を持っているかを示すものであります。
【頭痛の分類】
次に頭痛の分類ですが、国際頭痛分類では以下のように大別されます。
https://www.jhsnet.net/kokusai_2019/34.pdf
(日本頭痛学会HPの国際頭痛分類に関するページです。)
※さらに細かく分類すると300種類以上にもなります。
一次性頭痛・・・頭痛自体が病気であるもの。
-
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
- 三叉神経・自律神経性頭痛(群発頭痛など)
- その他の一次性頭痛疾患
二次性頭痛・・・何らかの病気があり、その影響で頭痛を認めるもの。
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- 頭部外傷による頭痛
- 血管障害による頭痛
- 脳腫瘍などによる頭痛
- 物質またはその離脱による頭痛
- 感染症による頭痛
- ホメオスターシス障害による頭痛
- 眼、耳、鼻、歯などが原因の頭痛
- 精神疾患による頭痛
有痛性脳神経ニューロパチー、顔面痛など
【頭痛の種類のまとめ】
全体の頻度としては緊張型頭痛が最も多く、典型的には肩や首が凝って頭全体が重く締め付けられるといった症状が現れます。
片頭痛は頭痛外来を受診される方の中では圧倒的に多い病態です。日常生活に大きな影響を与えることが多く、典型的な症状はこめかみや後頭部の一部分が脈打つように痛く、閃輝暗点などの視覚的な前兆があり、嘔気を伴い、動くと頭痛が悪化するなどの症状になります。
群発頭痛は頻度は少ないものの、目の奥がえぐられるような激痛で、典型的には1年のうちのある一定期間に痛みが続くことが知られています。
二次性頭痛の診断には画像検査が必要となることが多く、病状によっては入院治療が必要となることもあります。頭部外傷に伴う頭痛や脳腫瘍や脳血管障害による頭痛、かぜや副鼻腔炎、髄膜炎などの感染に伴う頭痛など様々です。メンタル不調が原因の頭痛も多く見受けれます。
初めての頭痛やいつもの頭痛とは異なる頭痛が出現した際には、医療機関での精密検査をお勧めします。
【よくある症状について】
- 頭全体が重い、締め付けられる痛み
- 肩こりがあって頭痛もある
- 頭の一部分が脈打つように痛い
- 寝込むほどの頭痛
- 目の奥が痛い
- 局所的に鋭い痛みが間欠的に出る
- 顔面の鋭い痛み
- 頭をぶつけた後から頭痛がある
- 市販薬で改善しない頭痛
以下は症状についての一般的なお話ですので、必ずしも全ての方に当てはまるものではございません。
- 痛みの強さはどうですか?10点満点で考えると何点ですか?
→痛みの強さと重症度はある程度相関します。
- 頭痛以外の症状はありますか?手足が動かしにくい、しびれる、感覚がおかしい、視野が欠ける、言葉が出ない、物が二重に見える、聴力低下、耳鳴り、呂律が回らない、めまい、ふらつき、嘔気や嘔吐などの症状はありますか?
→症状によっては緊急性を要することがあります。
- その頭痛は突然発症しましたか?(何月何日の何をしている時に出現したなどと明確に頭痛の始まりがわかりますか?)
→突然の激しい頭痛は緊急性を要することが多いです。
- 頭痛は常にありますか? 痛くない時もありますか?
→突然発症して痛みが続く場合には、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
- 頭痛が始まってから現在まで頭痛の頻度はどうなっていますか?痛みの強さはどうなっていますか?
→頻度が増え、痛みが悪化してくる場合には早めに医療機関を受診してください。
【治療について】
治療を大別すると、「頭痛時の治療」と「頭痛の頻度を減らすための予防治療」に分けられます。頭痛の種類ごとにこれらの治療方法は異なります。
当院では頭痛の診療ガイドラインに則った治療を基本としておりますが、ご希望がございましたらそれ以外の治療方法もご相談させていただきます。
https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_2021.pdf
(日本頭痛学会HPの頭痛の診療ガイドライン2021に関するページです。)
片頭痛に関しては、予防薬として抗CGRP製剤による治療も行っております。(抗CGRP製剤は「ガルカネズマブ:商品名 エムガルティ®︎」「フレマネズマブ:商品名 アジョビ®︎」「エレヌマブ:商品名 アイモビーク®︎」の3種類になります。)
https://www.emgality-patient.jp
https://ajovy.jp
https://www.aimovig-pts.jp
治療を行い完全に治癒することが(頭痛がゼロになる)最も望ましいことでありますが、慢性的な頭痛に関しては生活やお仕事などに支障を来すことがないようにお付き合いしていく、というところをまずは目指すこととなります。
「頭痛外来」という形態で診療を行っておりますと、一筋縄ではいかないような複雑な頭痛をかかえておられる患者さんも多く来院されます。まずは、一緒にお困りごとを共有して、解決方法を探していきたいと考えておりますので、お気軽にご相談ください。
【よくあるご質問】
Q1. 頭痛で病院を受診したほうがよいでしょうか?
→まず、緊急性のある頭痛がどうかを見極める必要があります。緊急性がない頭痛であっても対処方法を間違えると、慢性化し生活に支障をきたすことがあります。一度だけでも頭痛専門医の診察をお受けすることをお勧めします。「頭痛は我慢するもの」という考えは間違いとご理解ください。
Q2. 市販薬を使用することはダメなのでしょうか?
→頭痛の頻度が少なく日常生活に支障を来していなければ、市販薬で対応することは必ずしもダメではありません。しかしながら、頭痛の頻度が多い場合は市販薬でその頻度を減らすことはできず(その場しのぎとなることが多い)、逆に市販薬を使用する回数が多くなることで、市販薬が頭痛の原因となる薬物乱用頭痛を引き起こす可能性があります。
Q3. 頭痛の検査はどのように行われますか?
→まずは問診が重要になります。頭痛の性状や頭痛の頻度、頭痛が日常生活にどのような影響を与えているかを評価します。次に、1次性頭痛と2次性頭痛の鑑別目的として画像検査や血液検査を行うことが多いです。
Q4. どのような治療がありますか?
→頭痛の発作に対する治療と頭痛の発作を予防する治療に分けられます。飲み薬の治療や注射の治療だけでなく、特に大切になる頭痛を起こさないような生活習慣についてアドバイスをさせていただきます。慢性頭痛については薬物治療だけではなく、頭痛に向き合った生活習慣を身につけることが極めて大切となります。また、2次性頭痛の場合は、頭痛の原因となっている疾患の治療が必要となります。
Q5. 頭痛だけで通院を継続する時間がないのですが。
→診断が確定し病状が安定している患者さんでは、オンライン診療も治療継続の手段として非常に有用です。お気軽にご相談ください。